心得16~21

心得16~21

心得16 ウィスキー・ボトル1本で広がる、夢のような世界

時間に余裕のある旅をできる人にお勧めなのが、ローカル線に乗って気に入ったロケーションの所で途中下車して、ウィスキーをそのキャップでちびりちびりと飲むことです。

例えば、青い空に、ふわーっとした雲がいくつか浮かんでいて、低い山が連なって、その下に緑の絨毯を敷いたような丘が広がっていて、そんな場所が1両だけのディーゼル車の窓から見えてきました。

私なら、ザックを抱えて、直ぐに下車してしまいます。そこで、ザックの中からウィスキーを取り出して、ちびりちびりと飲むのです。ちょっと、酔ってきたら一眠りです。しごく、幸せな気分です、そう思いませんか。

【東北地方にて】

心得17 野宿にダンボール箱は必需品

ダンボール箱は、旅の中で持ち運びはできませんが、現地調達した場合、これほど心強いものはありません。

マットの役目、枕の役目、風除け、防寒に使えます。小雨程度ならしのげます。

青森県・長苗代(八戸線)近くの跨線橋の下で野宿したときのことです。この場所は、以前乞食が住んでいた所でした。一緒に野宿した今は亡き友のとっておきの場所です。この場所で、新宿駅西口の連絡道の浮浪者よろしくダンボール箱でねぐらを作って寝ました。これが、実に快適でした。

浮浪者が好んで、これを使う理由が分かりました。

皆さんも試してください。浮浪者を見る目が変わりますよ、変わってください。

【青森県長苗代駅周辺にて】

心得18 東北の山奥には人情がたっぷり残っている

岩手県下閉伊郡岩泉町安家年々での話です(1970年代)。

ここは、国鉄・岩泉線の終着駅、岩泉駅前から、日に2往復しかない国鉄バスに、林道を2時間ほど乗っていきます。
その、終点からさらに林道を2時間(距離にして10Kmほど)歩きます。

私は、学生時代、体育会系探検部に所属していて、桃の木洞という鍾乳洞にケービング目的で、この安家年々に来たわけです。

岩手県は、今となれば、東北新幹線や東北自動車道の開通で首都圏と結びついて、便利になりましたが、当時は日本のチベットと呼ばれ、その中でも、下閉伊郡はさらにチベットといわれ、こんな日本があるなんてという思いのする所です。

入洞前日、年々地区の公民館(下の写真が1977年当時の公民館写真です。右側のチャラチャラ男が若き日のまる高です。)に泊めていただくために、村長(むらおさ)のところに挨拶に行き、快く使用許可をいただきました。

その村長の家では、奥さんとおぼしき人が、上半身裸、すなわち、おっぱいポロリの状態でした。
見ている我々の方が恥ずかしい思いをしました。

この地区は東西を深い山に囲まれていて、村の中央を細い林道1本と、小川が流れていました。
その小川の所々に湧き水が有り、それを飲料水としています。
洗濯は、その小川でするようです。

翌日、驚いたことに、公民館の玄関前に、ざるに山ほど入った野菜が置いてありました。
気味が悪いものですから、村長の家に行って、そのことを伝えたところ、

「それはだな、この村の子供たちが街に働きに出ていて街の人にお世話になっているから、街から来た人にお礼のつもりで誰かが置いていったんじゃろ」

【岩手県下閉伊郡岩泉町安家年々にて】

心得19 東北の山奥には歴史がある

弘前大学体育会探検部の新人歓迎合宿で、青森県弘前市から秋田県境・田代岳を超えて秋田県田代町までの山行したときのことです。

私はその新人でした。

田代岳の下山後、澄川開拓地跡に幕営しました。
何も知らず、ここまで連れて来てもらった私は先輩にここのいわれを尋ねたところ、明治時代にこの地に開拓にきて貧しい土地を苦労しながら開墾していったが、根尽きて撤退してしまったそうな。

下の写真は、澄川で撮ったもので、真ん中の黄色のヤッケを着たウンコ・スタイルの男が若き日のまる高です。

幕営した近くには、お茶碗のかけらや、朽ちた柱が転がっていました。

【秋田県澄川開拓地跡にて】

心得20 キャンプ場でまちがっても、Hをしようとしてはいけない

これは、止めたほうがいい。キャンプ場は、子供もいるわけで、止めたほうがいい。

1990年代はじめの頃です。
場所は、北アルプスのふところ、徳沢(上高地から歩いて2時間ほどの所)です。

我々は、烏帽子岳から裏銀座コースで槍ヶ岳から下山し、ここに着いたときのことです。
午後3時にはテントを張り、山行の疲れを癒していました。

日差しはまだまだ強く、元、放牧場だけあって明るい雰囲気の広々としたさわやかなテント場です。
夏休みは既に始まっていて、子供たちが結構いて、テント場を所狭しと走り回っていました。

その頃、我々のテントの近くに、ドイツ系のカップルが2人用の小さなテントを設営していました。
設営と同時にそのカップルは、テントの中に潜り込んだようです。
周りが日本人ばかりで、ちょっと照れているのかと思いました。

ところが、ところがだ、これが。いきなり、

「アーン、アハッ、ウフーン、オーゥ、オーゥ

ときたもんだ。

この女性の声がすごい。吠えているとしか言いようがない。

子供たちの親達はパニックです。
子供たちは何事が始まったのか、ポカーンとしていました。
子供の耳をふさぐ親、子供の手を引いてテント場を離れる親、それぞれ対策を講じていました。

そんな、騒ぎをよそに、このドイツ系カップルはテント場と同じさわやかな雰囲気で、テントから伸びをしながらでてきました。

馬鹿野郎。

【北アルプス・徳沢にて】

心得21 酔っ払って、砂浜に寝てはいけない

酒飲みの方、これは気を付けたほうがいいですよ。
顔が完璧に別人になります。

今、ユネスコの世界遺産に登録されて有名になった白神山地・白神岳から下山し、津軽西海岸の国鉄五能線の陸奥黒崎駅からほど近い砂浜に、野宿することにしました。

夏の盛りの頃で、疲れを癒すために先輩とビールを結構、ガンガン飲みました。
眠気が襲い寝袋に入り、顔だけ出して寝ることにしました。
いろいろあった山行を思い出しながら……

さあ、朝です。いきなり、全開の大爆笑です。

先輩の顔を見たら、その顔がゴルフボールのようにボコボコしているではありませんか。
何のことはない、私の顔も同じ状態になっていました。
二人とも、ビールに誘われてやってきた蚊に刺されてしまったのです。

【青森県津軽西海岸にて】

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